- 尾瀬沼ビジターセンターブログ
- 2025.09.05
2025年9月5日-尾瀬沼ビジターセンターより(コケだけどコケじゃない)
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尾瀬では、まだ営業を開始していない施設や閉鎖している施設があります。
尾瀬においでになる際には、2025(令和7)年シーズンについての確認をお願い致します。=============================================================
■天気:雨のち曇り
気温 :17.3℃(9時)19.8℃(昨日の最高気温)16.6℃(今日の最低気温)
ブログをご覧の皆さまこんにちは。
尾瀬沼周辺では、朝からまとまった雨がしとしとと降り続いており、散策には少し難しい天気となりました。明日は晴れの天気予報が出ているので、この土日には期待したいところです。
【大江湿原の様子】


山霧に包まれた大江湿原では背景の山肌がぼやけ、いつも以上に三本カラマツがはっきりと見えました。湿原の緑も少しずつ秋らしい色に染まり、オクトリカブトの青、サラシナショウマの白、コバイケイソウの焦茶がアクセントを加えていました。
【成長したオオバンの幼鳥】


尾瀬沼からは「キューイ!キューイ!」と甲高いオオバンの鳴き声が聞こえてきました。8月15日に比べて身体もすっかり大きくなり、顔の周りも赤色から白色へと変化しつつありました。かつては親鳥のくちばしから水草の種をもらっていましたが、もう自分達で直接水草をつついて食事をしているようでした。
【コケだけどコケじゃない_ウメノキゴケの仲間】


さて、木の表面をよく見ると、コケのようなものに覆われているのを見かけることがあります。こうしたものの中には、「ウメノキゴケ」と呼ばれる生き物の仲間が含まれています。
名前に「コケ」とありますが、実はこのウメノキゴケの仲間、植物のコケとはまったく別の仲間で、地衣類(ちいるい)と呼ばれる生物です。地衣類は、菌類(キノコに近い仲間)と緑藻類、あるいはシアノバクテリアが共生し、2種類以上の生き物が力を合わせて1つの体のように暮らしています。
【地衣類のからだの仕組みと生態】

2つの生き物が一緒に暮らすと、どんな良いことがあるのでしょうか?
共生している緑藻類は、植物と同じように太陽の光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素から栄養分である糖(炭水化物)を作り出します。そして、そのうちの大部分を菌類にわたしています。
一方、菌類は緑藻類に、乾燥に強い住みかや大気中の水分、さらに空気中のホコリなどに含まれるリン酸塩や硝酸塩といった肥料分を提供しています。
このようにお互いに助け合うことで、どちらも単独では生きにくいような環境でも暮らすことができるのです。
ウメノキゴケの仲間がうっすらと緑色に見えるのは、緑藻類が持っている光合成のための色素によるもので、その姿が植物のようにも見える理由のひとつです。
【もう一つの地衣類_サルオガセの仲間】

尾瀬の森の中で、風に揺られてゆらゆらと漂う幽霊のような存在、サルオガセ。実はこれも、地衣類の仲間になります。
地衣類は、一見すると木の病気のようにも見えることがあり、ときに「木に寄生して栄養を奪っている」と誤解されることもあります。ですが実際には、体内に共生している緑藻が光合成によって栄養を作り出しており、自らの力で生きている、いわば「自己完結型」の生き物です。
さらに地衣類は、火山の噴火でできたばかりの溶岩地帯のような、栄養のほとんどない土地にもいち早く定着することがあります。どこからか飛んできた胞子が岩の上で発芽し、やがて岩を少しずつ浸食しながら、他の植物が育つための土壌をつくり始めるのです。こうした地衣類のはたらきは、森林が再び育っていくための最初のきっかけであり、生態系にとって非常に重要な役割を担っています。
【コケ植物としてのコケ】


こちらはいわゆるコケ植物としてのコケ。細胞内に葉緑体を持ち、光合成を行い生活しています。体内に維管束(水を運ぶ道管と栄養分を運ぶ師管)を持たないため、体中に水を巡らすことは進化した植物に比べて少し苦手です。そのため水気の多いところを好んで生育しています。
【最後にもう一つ、コケだけどコケじゃない】

最後にもう一つ、「コケ」と名前がついているけれど、実はコケの仲間ではない植物をご紹介します。それがモウセンゴケとナガバノモウセンゴケ です。
名前に「コケ」とありますが、写真をご覧の通り、花を咲かせて実をつける、れっきとした種子植物です。つまり、コケ植物ではなく、しっかりと分類上は別のグループに属しています。
このように、身近な生き物の中には、名前や姿が似ていても、まったく異なる分類に属しているものがたくさんあります。「あれ?」と不思議に思った生き物を少し詳しく調べてみると、新たな発見があるかもしれません。そんな「気づき」の体験も、自然観察の楽しみのひとつとしていかがでしょうか。
※尾瀬沼地区においてツキノワグマの目撃報告があります。大江湿原と釜ッ堀湿原にクマ鐘を設置してあります。ツキノワグマと遭遇しないように、クマ鐘を鳴らして通行するとかクマ鈴を携行するなどの安全対策をお願いします。詳しくはこちらをご覧ください。
※尾瀬では、森の中と湿原で体感温度が違います。遮るものがない湿原では、晴れの日は暑く、風が吹くと寒く感じます。また、天候が変わりやすく、急に大雨が降ることもあります。帽子や日焼け止め、雨具を必ずお持ちください。
◆秋の特別トークショーのお知らせ
9月14日に歩荷さんをお呼びしてのトークショーを予定しています。参加費は無料です。 詳しくは、こちら<【尾瀬沼ビジターセンターのイベント情報】(歩荷さんトークショー)>をご覧ください。
【アクセス】
※沼山峠口
御池~沼山峠間のシャトルバスは運行中です。詳しくは、会津バスHPをご覧ください。
※大清水口
大清水~一ノ瀬間の低公害車は運行中です。詳しくは、片品村HPをご確認ください。
【尾瀬保護財団では広く寄付をお願いしております】
ご寄付をいただいた方にオリジナルのバッジを差し上げています。
2025年「第四弾」は、尾瀬沼の夏シリーズです。(三本カラマツ、ハクサンコザクラ、ヤマネ、アサギマダラ)

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