令和5年度尾瀬保護財団の主な事業
実施方針
尾瀬の自然環境及び利用の現況並びに財団のこれまでの取組の経緯等を踏まえ、尾瀬の保護とその適正利用を推進する。
財団のミッションとして、「尾瀬での体験と感動を、自然を守る力に変える」を掲げ、以下に示す3つの柱のもと、重点目標の達成に向けて事業を実施する。
3つの柱
①つたえる
積極的な情報発信を通して、より多くの人が尾瀬との接点を持ち、尾瀬の自然環境の魅力や大切さを理解するきっかけを作る。
②うながす
尾瀬での体験や学びを通して、尾瀬の価値や自然との正しい接し方への気づきをうながす。
③つなぐ
尾瀬と尾瀬を想う人、尾瀬関係者同士をつなぐことで、尾瀬を未来につなぐ。
重点目標
1.尾瀬の適正利用の推進
2.尾瀬の保全対策の推進(至仏山保全対策、外来植物対策)
3.尾瀬を活用した質の高い環境学習の推進
4.普及啓発の推進
5.事業推進体制の強化
6.人材育成の推進
7.財政基盤の強化
事業計画
1.利用者啓発事業
尾瀬の適正利用を進めるため、入山者に対し、尾瀬にふさわしい利用マナーの啓発を行うとともに、繊細で貴重な尾瀬の自然について理解を深めるための自然解説等を行う。
(1)入山者啓発事業
①入山口啓発
尾瀬の環境美化や入山マナーの向上を図るため、主要入山口(鳩待峠口・沼山峠口・大清水口等)において、尾瀬ボランティアの協力の下に、入山マナーの啓発、利用案内などを実施する。
【拡充】外国人への入山マナー啓発
新型コロナウイルスの5類感染症への引き下げを見据え、増加が見込まれる外国人訪問客へのマナー啓発にあらためて注力する。
②尾瀬ボランティアの活動支援
主要入山口での啓発活動、お話しボランティア(定点解説)など、ボランティア活動の充実強化を図るため、活動の調整を行うとともに、尾瀬ボランティアの資質向上を目的とした研修会等を開催する。また、新たな活動メニューを追加し活動の幅を広げることで、ボランティア活動の活性化を図る。
【重点】インタープリテーション研修の再開
新型コロナウイルス対応により、令和2年度から実施を休止していたインタープリテーション研修を再開し、尾瀬ボランティアの自然解説技術の向上を図るとともに、ボランティア・入山者双方の満足度向上に繋げる。
→ 尾瀬ボランティア
③ガイド利用の普及・促進
入山マナーの向上、質の高い自然体験、安全確保等を図るため、ガイド利用の普及・促進を図る。
●尾瀬ガイド協会との連携
ガイド利用による自然体験やエコツアーなどを通して、尾瀬の自然環境の保全と適正利用を図るため、尾瀬ガイド協会と連携する。
●尾瀬自然解説ガイド
ガイド利用の魅力、有用性等を利用者に啓発し、その普及を図るため、来訪者に対して、尾瀬自然解説ガイド(尾瀬ボランティアを母体とする)によるガイド活用をPRするとともに、新たなガイドの養成を検討する。
(2)自然解説事業
①自然解説事業
利用者が尾瀬の貴重な自然について認識を深め、適正利用を促進することを目的として、自然解説活動を実施する。
②環境学習推進事業
「環境学習の場」としての尾瀬の利用促進を図るため、山の鼻ビジターセンターでミニツアーを実施するほか、現地情報や学校の利用状況についてインターネットで情報発信を行う。
(3)研修事業
①指導者の養成
職員の資質向上を図り、指導者として養成するため、各種研修会に派遣する。
②職員研修の実施
円滑な業務運営を図るため、職員を対象に、業務内容及び国立公園制度などの研修を実施し、職員のスキルアップと体制の強化を図る。
③救急救命研修
山岳事故が増える中で、入山者の安全・安心を確保するため、現地に勤務する全職員を対象に応急手当、体外式除細動器(AED)操作訓練等の救急救命研修を実施する。
(4)普及啓発事業
①機関誌の発行
四季折々の自然、財団の活動状況、その他尾瀬に関する幅広い情報を関係者や尾瀬ボランティア、友の会会員等に提供するため、機関誌「はるかな尾瀬」を引き続き刊行する。
②SNSを活用した情報発信の強化
●Instagramを活用したキャンペーンの実施
若年層をはじめとしたSNS利用者からの認知度を向上させるため、Instagramにおいて、尾瀬の優れた写真を募集するキャンペーンを実施する。
入選作品に対する賞品に、魅力的な地元産品を活用すること等により、尾瀬周辺地域のPRに繋げる。
●【拡充】YouTube及びnoteによる情報発信の強化
YouTubeでの動画配信による情報提供や令和4年度に開始したnoteでの発信等により、尾瀬の魅力発信や尾瀬を訪れる際の注意点について啓発を行う。
●啓発リーフレット等の作成・配布
入山口や利用日など利用分散化の推進を図るため、尾瀬地域の交通対策等のリーフレットを作成し、関係機関・団体及び入山者等に配布する。また、尾瀬国立公園案内マップの日本語版増刷に併せて、インバウンドの回復状況を注視しながら外国語版(簡体字・韓国語)の改訂増刷を行い、外国人入山者に対する啓発効果を高める。
●ホームページの管理運営等
尾瀬の保護と適正利用を推進するとともに、財団の活動を周知するため、ホームページを活用し、タイムリーな尾瀬情報や財団の活動等の情報を発信する。
●尾瀬の魅力発信
尾瀬の魅力発信や適正利用を促進するため、費用対効果を検討のうえ、各種イベント等に出展を行う。
令和4年度に登山系YouTuberに制作委託した動画を、各種イベントやビジターセンターで公開することを通じて尾瀬の魅力を発信する。
●出張講演
行政機関、教育機関、旅行業者等が主催する講演会等への出張講演に積極的に対応し、尾瀬の貴重な自然や適正利用の推進などのレクチャーを通じて、尾瀬国立公園のすばらしさと大切さを広く一般の方々に広報していく。
2.環境保全事業
(1)植生回復事業
福島県及び群馬県から業務を受託し、植生回復及び保全事業を実施する。
(2)至仏山保全対策
至仏山保全対策会議を活用し、至仏山保全基本計画に基いて植生保護や利用の適正管理などの、貴重な自然を保全していくための各種対策を検討し実施する。
(3)尾瀬シカ対策事業
林野庁や群馬県が実施している植生保護柵の設置・撤去作業について、尾瀬ボランティアや企業ボランティアの協力を仰ぎながら引き続き協力する。
(4)外来植物対策事業
尾瀬での外来植物の増殖を防ぐため、現地調査により外来植物の分布状況の把握を行い、関係機関と連携して除去活動を行う。
これまでの除去作業の取組を検証し、効果が高いと判断される箇所は継続観察とする一方、効果が低いと判断される箇所は重点実施地区として複数回の除去作業を計画するなど、実効性の高い対策に取り組む。
3.施設管理事業
入山者の安全・快適な利用を図るため、環境省及び群馬県から管理運営業務を受託し、公園施設の維持管理を行う。
(1)ビジターセンターの管理運営
尾瀬沼ビジターセンター(環境省)及び尾瀬山の鼻ビジターセンター(群馬県)の管理運営を行う。
【重点】ビジターセンター展示の見直し
両ビジターセンターの展示について、関係者の協力を仰ぎながら適宜見直しを行い、来訪者の理解促進と施設の魅力向上に繋げる。
(2)公衆トイレの維持管理
尾瀬沼地区、山ノ鼻地区、竜宮地区の公衆トイレの維持管理を行う。
4.調査研究事業
(1)適正利用推進事業
平成30年度に策定された「新・尾瀬ビジョン」を踏まえながら、財団においてもその実現に向けて主体的に取り組む。
令和3年度より環境省から受託している利用状況調査アンケートを継続して受注し、アクションプラン策定に協力するとともに、尾瀬の基礎資料として蓄積を行う。
(2)ツキノワグマ対策事業
ツキノワグマ対策については「尾瀬国立公園ツキノワグマ対策協議会」の運営を行うとともに、入山者に対する啓発等について関係者とともに取り組む。
5.顕彰事業
【重点】「尾瀬賞」の枠組変更
事業見直しのため募集を休止している「尾瀬賞」については、費用対効果を踏まえて予算規模を見直すとともに、新たに助成事業を加えるなど枠組みの改変等を検討する。
→ 尾瀬賞
6.友の会等事業
財団活動に対する支援を幅広く求めるため、特典の拡充と会費の増額を検討し、会員の増加に努める。
7.寄付金・協力金の募集
財団事業の充実と財政基盤の強化を図るとともに、尾瀬に対する幅広い支援を求めるため、公益財団法人への寄附税制の優遇措置制度を活用し、企業・団体等に対し積極的に寄付を募る。また、令和4年度に導入したクレジットカード決済サービスの周知・浸透を図り、個人からの寄付を募る。
協力金については、令和3、4年度に研究者やデータサイエンティストと連携して実施した行動デザインを活用したトイレチップ増加策をベースに、更なる増加策を検討する。
8.関係者連携対策
【重点】「尾瀬サミット」の枠組変更
尾瀬関係者が一堂に会し、尾瀬に関する課題や地域間連携等について話し合うため開催されてきた「尾瀬サミット」については、令和4年度に関係者あて実施したアンケート調査結果を踏まえ、イベント形式の「尾瀬フェア」を新たに加えるなど枠組みを改変するとともに、事業再開に向けて各種調整や現地の意見・ニーズの把握等を行う。
9.財団の運営
(1)評議員会の開催
事業報告、決算の承認、その他重要事項等について審議を行うため、定時評議員会を6月に開催するほか、必要に応じ、臨時評議員会を開催する。
(2)理事会の開催
事業計画、予算など業務執行の決定、その他重要事項等について審議を行うため、定時理事会を6月と3月に開催するほか、必要に応じ、臨時理事会を開催する。
10.その他
(1)受託事業の活用
財団の活動を充実させるため、国や各自治体などからの尾瀬に関わる委託事業を積極的に受託する。
(2)助成金の活用
財団の活動財源を安定的に確保するため、事業内容に応じて助成金の積極的な活用を図る。
(3)基本財産の運用
常時金融機関との連携を図ることで金融市場の動向を注視し、適時適切な運用方法で利息を確保する。
公益事業はもとより財団全体の運営を安定させるため、利息額の「維持」から「増加」への転換を目指し、中長期的な目線での運用を行う。