尾瀬のシーズン
尾瀬のシーズンは、尾瀬までの道路が通じている4月中旬~11月上旬ですが、一般的に利用しやすい期間は5月中旬~10月中旬です。この約半年間の間に四季や魅力が凝縮されています。
早春の尾瀬 5月上旬
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下界では日増しに暖かくなる時期ですが、5月のゴールデンウィーク頃の尾瀬はまだ冬の装いです。年によって差はありますが、一面雪に覆われており、十分な装備と経験が必要となります。木道も見えていないことの方が多く、地図と木の幹に塗られた赤いマークや枝に吊るされたリボンを頼りに目的地に向かいます。
雪解け 5月中旬~下旬
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5月中旬~下旬になると雪が消え始め、木道がところどころ顔を出すようになります。木道と木道の間などでは、表面は雪に覆われていますが下は空洞になっていて、不用意に乗ると足がズボっと沈んでしまういわゆる「踏み抜き」がはじまり、歩きにくくなります。思わぬ大怪我につながるため、慎重さが求められます。
赤渋(アカシボ) 5月下旬
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雪解けの頃になると、雪の表面が赤い土をまいたようになる「赤渋(アカシボ)」と呼ばれる彩雪現象が見られるようになります。このアカシボですが、最新の研究では、泥炭の中から供給された鉄と雪解け水に含まれる酸素から「細菌」の活動によって酸化鉄が作られ、雪が赤褐色に染まるのだと言われています。雪が消えるまでのほんの一瞬の不思議な光景です。
ミズバショウのシーズン 5月下旬~6月上旬
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湿原の雪がようやく消える頃、尾瀬はミズバショウのシーズンを迎えます。純白のその姿は尾瀬のシーズンの幕開けにふさわしい姿です。同じ頃に咲くリュウキンカの黄色い花がさらに色を添えます。尾瀬ヶ原や尾瀬沼までの林内では、まだ残雪が見られますのでご注意ください。
ワタスゲのシーズン 7月上旬~中旬
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ワタスゲは、雪解けの頃に花芽を付け、6月になると黄色い小さな花を咲かせます。梅雨が始まる7月頃になると花が終わって果穂(かすい)(綿毛)となり、一面を埋め尽くす白い綿毛に多くの方が驚きます。
ニッコウキスゲのシーズン 7月下旬
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尾瀬が最も華やかなのはこのシーズンでしょうか。ワタスゲの白い綿毛に続き、黄色いニッコウキスゲの花で湿原が彩られます。例年、梅雨が明けるか明けないかぐらいの頃、国民の祝日「海の日」前後が見頃となります。
夏山登山シーズン 8月
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7月下旬に梅雨が明けると、8月からは本格的な夏山シーズンが始まります。尾瀬では日本百名山3座に加え、日本二百名山・帝釈山や花の百名山・田代山など、数多くの名山に登ることができます。この頃になると尾瀬でも暑い日が続きますので、熱中症にならないように適度な水分補給と休憩を取りながら楽しみましょう。また、午後は天候が急変することが多くなりますので、早出早着の行動を心がけるようにしましょう。
草紅葉(くさもみじ)のシーズン 9月
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9月に入ると紅葉のシーズンが始まります。まず初めに、湿原の草の先端からオレンジ色に染まっていきます。日差しに向かって湿原を見ると、湿原全体が金色に光って見え、風にそよぐさまに誰もが魅せられます。朝晩は冷え込むようになりますが、日中は天気が良いとまだまだ暑さを感じる季節です。
紅葉のシーズン 10月上旬
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9月下旬、草紅葉のオレンジ色が茶色に変わる頃、木々の紅葉が始まります。特に尾瀬周辺のブナ林の紅葉は見事で、尾瀬までの道路沿いでも徐々に紅葉を楽しめるようになります。10月上旬になると朝晩の気温が氷点下に達することもあり、木道などの凍結に注意が必要となります。
晩秋 10月中旬~下旬
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10月中旬になると山々の広葉樹は葉を落とし、山小屋では下山の準備が始まります。この頃になると尾瀬の人影はまばらになりますが、静かな尾瀬を狙ってこの時期に訪れる方も多くいます。また、10月中旬には山々の初冠雪、10月下旬には尾瀬沼・尾瀬ヶ原周辺で初雪がちらつくことがあり、根雪にはならないものの数センチ積もることもありますので注意しましょう。
代表的な名所
至仏山
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至仏山の標高は2228mで、長い年月をかけて隆起してできた尾瀬の中で最も古い山です。蛇紋岩という特殊な岩からなり、他の山では見られない花が咲きます。蛇紋岩は濡れると滑りやすいため注意が必要です。融雪期の植生保護のため、例年5月7日から6月30日は入山が禁止されています。また、山開き後は、尾瀬ヶ原から山頂に至る「東面登山道」が登り専用となります。
尾瀬植物研究見本園
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山ノ鼻から至仏山方面に進むと尾瀬植物研究見本園が広がっています。「見本園」という名前がありますが自然にできた湿原です。比較的小さなエリアにさまざまなお花が咲くため、体力に自信のない方、散策する時間のない方にお勧めです。内回り約20分、外回り約40分の2コースがあります。また、至仏山東面登山道の入口は見本園の奥にあります。
牛首
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山ノ鼻から尾瀬ヶ原を進むと、竜宮方面とヨッピ吊り橋方面への分岐があります。この分岐の付近に山が牛の首のように湿原にせり出している場所があり、「牛首」と呼ばれています。ここまで山ノ鼻から約40分、比較的広いベンチがあり多くの方が休憩を取っています。
ヨッピ吊り橋
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ヨッピとはアイヌ語で「集まる」という意味があると言われています。さまざまな川の流れが集まってできたヨッピ川が、この橋の下流で尾瀬沼から流れてきた沼尻川と合流し、只見川となって日本海(新潟方向)に流れて行きます。川の流れに沿って歩くこのルートでは、一味違った尾瀬を楽しむことができます。山ノ鼻からヨッピ吊り橋まで約1時間30分です。
竜宮現象
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流れてきた川が、一旦湿原の下に吸い込まれて伏流水となり、木道を隔てた反対側に湧き出しています。この伏流水のトンネルがおとぎ話の「竜宮城」に通じているのではということでこの名前があります。ここまで山ノ鼻から約1時間20分、尾瀬ヶ原に日帰りで来られた方の多くが竜宮十字路で引き返して行きます。
アヤメ平
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尾瀬ヶ原の南側の尾根の上に発達した湿原です。湿原の向こうに燧ヶ岳が見える様はまさに「天上の楽園」と言えます。この地に咲くキンコウカをアヤメと見間違えたことからこの名前が付いたという説があります。鳩待峠から約2時間です。
平滑ノ滝(ひらなめのたき)
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尾瀬ヶ原の一番東の端から北に向けて福島県と新潟県の境を流れる只見川にある滝です。幅700m、長さ500mにも及ぶ花崗岩の一枚岩の上を斜めに下る水の流れを、かなり高い場所にある展望台から眺めることができます。
三条ノ滝
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高さ100m、幅30mに及ぶ大瀑布です。平滑ノ滝の少し下流にある壮大な滝で、登山道から少し下ったところにある展望台からその姿を間近に見ることができます。尾瀬に降った水が全てこの滝に集まるため、尾瀬のイメージとはまた違った豪快さを感じることができます。特に雪融けの時期は水量も多く、流れ落ちる様は圧巻です。
燧ヶ岳(ひうちがたけ)と尾瀬沼
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燧ヶ岳の標高は2,356mで、東北以北最高峰、至仏山と並び尾瀬を代表する名峰です。度重なる噴火によりゴツゴツとした5つの山頂を持つ活火山で、山頂からは尾瀬沼や尾瀬ヶ原を見渡すことができます。毎年7月第一日曜日に山開きが行われます。
そして、燧ヶ岳の山体崩壊によって沼尻川がせき止められたことでできた「尾瀬沼」。標高1,665mに位置し、沼の北岸や東岸には大小様々な湿原が広がっていてハイカーの目を楽しませてくれます。
大江湿原
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尾瀬沼周辺で一番大きな湿原です。沼山峠から約50分で到着し、四季折々の花々が楽しめます。尾瀬沼畔には小さく盛り上がった土地の上に3本のカラマツがあり、「三本カラマツ」として尾瀬沼を訪れる人々から愛されています。7月下旬の海の日前後には、黄色いニッコウキスゲで湿原が彩られます。
大清水
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大清水は尾瀬沼に至る群馬県側の入山口です。山際には「大清水湿原」があり、ここでは標高が低いためにミズバショウやニッコウキスゲなどの花が尾瀬沼や尾瀬ヶ原よりも早く咲き、手軽に楽しめます。その他、平成の水百選に認定されている「尾瀬片品湧水群」の名水、ミズナラやハルニレの巨木など、貴重な自然の恵みを感じることができます。自然保護の原点ともなった昭和40年代の道路建設計画の中止運動などの舞台になった場所です。
会津駒ヶ岳
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会津駒ヶ岳の標高は2,133mで、至仏山や燧ヶ岳とともに日本百名山に数えられる名峰です。馬の背のようになだらかな稜線と、山頂部に点在する湿原が特徴的な山です。山頂部からは燧ヶ岳や至仏山などを望むことができ、山頂部の湿原では7月上旬から中旬にかけてハクサンコザクラが咲くことでも有名です。毎年7月第一土曜日に山開きが行われます。
帝釈山
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帝釈山の標高は2,060mで、岩でできた山頂部は燧ヶ岳、会津駒ヶ岳はもとより、遠くは日光白根山、男体山などの山々が見渡せる眺望の良い場所です。また、馬坂峠登山口からは日本固有種オサバグサの群落が見られることでも有名です。毎年6月中旬に山開きが行われます。
田代山
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田代山の標高は1,926mで、山頂に広がる広大な台地状の湿原が特徴的な山です。花の百名山としても知られ、さまざまな高山植物を楽しむことができます。山頂の田代山湿原には木道が敷かれ、1周1時間ほどで歩くことができます。会津駒ヶ岳など周囲の山々の眺望も良く、気持ちの良い場所です。毎年6月中旬に山開きが行われます。
自然の作り出す美しい風景
朝霧、朝焼け
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大量の水を含んだ湿原では、朝と夕方、放射冷却により地表が冷やされることで地表付近に霧が立ち込めることが多くあります。朝、外に出てみると、湿原全体が霧に覆われている幻想的な光景を見ることができます。条件によっても異なりますが、太陽が昇ると次第に消えてしまうため、朝早く行動した方だけが見られる光景です。
白い虹
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大量の水を含んだ湿原で発生した霧に朝日が差し込んでくると、「白い虹」が見えることがあります。雨粒のように大きな粒では光が屈折して七色の虹になりますが、霧のように小さな水滴では光が完全には屈折せず白く見えます。幻想的で珍しい現象です。
星空
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人工的な光の少ない尾瀬では、綺麗な星空を楽しむことができます。夏場は水蒸気が発生することが多いため、空気の澄んだ涼しい時期の観察がお勧めです。
夜間はツキノワグマの行動も活発になりますのでご注意ください。