ブナと雪(ブナの森から冬の尾瀬を思い描いてみよう)

解説

 ブナは雪の多い地域の代表的な樹木で、尾瀬でも周囲の山々にはブナの森が見られます。

 ブナの樹皮は白っぽくまだら模様のようになっていますが、これは地衣類やコケが表面を覆っているためです。

 また、黒くてフサフサした蘚苔類も見られますが、この付き方を観察してみると、幹の中程から上部にしか見られないことが分かります。

 これは積雪によって幹に付いたものがはがれ落ちてしまうためで、その高さを調べることによって、おおよその積雪量を知ることができます。

 こんどはブナの根元を見てみましょう。根元付近で幹が曲がっているものがあるかと思います。

 これは根曲がりと呼ばれる現象で、雪の重みで幹が斜面下方に引きずられ続けることで起こります。このように雪のない季節でも、ブナを観察することで冬の森の様子を想像することができます。

■斜面に沿って雪が樹を引っ張ったために起きた「根曲がり」

 遅い春の訪れる5月には暖かい日射しを受けて、厚い雪に覆われながらも枝にまぶしいばかりの若草色の葉を付けます。

 雪解けは木々の根元から始まり、真っ白な山の斜面が黒い水玉模様へと移り変わります。

 この雪解けの現象は根開けと呼ばれ、暖かい春の風が根元を巻くように吹き抜けたり、雨が枝から幹へと集められて根元が溶けていると考えられています。水玉模様の山肌は、森が冬の眠りから覚めたメッセージなのです。

■残雪に覆われたブナの森。根元には水玉模様の「根開け」が見られる