一筋の登山道(尾瀬ヶ原から見えるあの筋は何だ? - 東面登山道)

解説

 至仏山の東面登山道(山頂~山ノ鼻)は平成元年から平成8年まで閉鎖され、歩くことができませんでした。どうしてなのでしょうか?

 尾瀬ヶ原から至仏山を見ると、山の中央付近に山頂から麓まで、岩がむきだしになった部分があるのが判ります。

 ここがかつて閉鎖されていた東面登山道です。

 多くの人が登山道で行き交うと、ほんのわずかですが、登山道の周囲も踏んでしまうことがあります。これが繰り返されると、踏み付けられた場所には植物が根を張れず、激しい雨によって土砂も流れてしまいます。

 そして周囲の荒廃した場所は、さらに登山道として人々に踏み付けられるようになって行きました。

 こうして登山道から周囲に向かって荒廃がすすみ、至仏山登山道のいたるところで植生破壊が進行していきました。

■尾瀬ヶ原から見た至仏山。中央付近に登山道がはっきりと見られる

 特に東面登山道の雪田植生を通過する区間では荒廃が著しく、閉鎖中の登山道整備による植生の自然回復が試みられました。

 ルート外へ踏み出さないような階段の取り付け、土砂流失を防ぐための筋状の土留めの設置、植物の移植などがおこなわれました。
しかし、利用再開後も登山道の荒廃が進んでいるため、尾瀬保護財団では関係者とともに「至仏山保全基本計画」を策定し、至仏山の自然を守るための取り組みを行っています。

 現在では残雪期の植生の踏み荒らしを防ぐために、毎年雪解けの頃(5月11日~6月末)に至仏山登山を禁止するとともに、東面登山道は登り専用で利用するように登山者に働きかけています。

■荒廃した東面登山道。現在も数多くの対策が講じられ、その保全に力が注がれている