赤い雪(雪解けの湿原を観察しよう、被膜のにおいを確かめよう - アカシボ)

解説

 雪解け頃の尾瀬ヶ原や尾瀬沼を歩いていて、雪が赤茶色に変色している不思議な現象を見たことはありませんか?

 これは雪解けが進み、地面があらわれる数日前に発生する現象で、アカシボ(赤渋)と呼ばれるものです。

 尾瀬ヶ原では研究見本園で多く見られますが、湿原だけでなく尾瀬沼の湖面でも同じように見ることができます。

■雪解け間近の尾瀬各所ではアカシボが見られる

 アカシボの正体や、発生のメカニズムについてはいまだに解明されていません。

 これまでの仮説では、赤色の色素を持つ藻類の増殖によるものや、鉄などの鉱物が溶け出したとされるものがありました。

 最新の研究では、アカシボの中に赤褐色の藻類が確認され、それがアカシボの正体と推測されています。

 枯れた植物に含まれた鉄分は、微生物の呼吸によって還元され水に溶け出します。雪解け後は、この鉄分が空気に触れることで酸化されて水面に被膜をつくり、金属光沢を持っているため、油が浮いているように見えます。

 湿原が油で汚染されたのかと思う方も少なくないのですが、心配はいりません。