影の主役(軽くさわって、どれだけ水を含んでいるか確かめよう - ミズゴケ)

解説

 木道でしゃがんでみると、コケが一面に湿原を覆っていることが分かります。

 やさしく触ってみるとこのコケが意外に深く、また夏の炎天下でも湿っていることに驚くかもしれません。

 このコケは茎の部分にレトルト細胞と呼ばれる、水を沢山含むことができる袋状の部分があり、ミズゴケと呼ばれています。

 夏の強い日差しを避けることのできない湿原を、湿った状態に保ってくれるのも、ミズゴケが目立たぬ活躍をしているおかげなのです。

■自重の19倍の保水能力があるミズゴケ

 ミズゴケの仲間は世界に150種類ほどあり、尾瀬ではこの内21種類を見ることができます。

 しかし、見た目に区別がつくのは数種類で、特に高層湿原(高位泥炭地)では同じ場所に複数の種類が混ざっているのでほとんど見分けがつきません。

 高層湿原にミズゴケが多いのはミズゴケ酸と呼ばれる酸性物質を出しているからで、酸によって他の植物が生活できない環境を作り、また微生物の働きを弱めることで泥炭の積み重なりを早めているからなのです。

 こうしてミズゴケたちはまわりの環境を自分の居心地の良い場所に変えることで、特別な植物にしか生活できない湿原を作り、その湿原を支えているのです。