尾瀬にただよう甘い香り(やさしく触ってその香りを確かめよう - ヤチヤナギ)

解説

 湿原には美しい花をつける植物がたくさんありますが、香りの良さで注目される植物もあります。

 ヤチヤナギは湿原に生える高さ50cmほどの低木で、名前からヤナギの一種だと勘違いされることが多いのですが、実際にはヤマモモ科の仲間です。

 雪解け頃に枝先に付ける、茶色く地味な花に気付く人は少ないのですが、葉が出始めるとヤチヤナギ特有の香りが湿原に漂います。

 やさしく手で触って嗅いでみると、シナモンに似た甘い香りがヤチヤナギをいっそう印象付けてくれると思います。

■膝くらいの背丈のヤチヤナギ。やさしく触って匂いをかいでみよう

 ヤチヤナギは栄養分の少ない湿原で生きるしくみをもっています。根粒菌というバクテリアと共生することで、空気中の窒素を取り込むこと(窒素固定)ができるのです。尾瀬ヶ原ではヤチヤナギが増えていますが、窒素固定が盛んに行われると湿原の栄養状態が変化するのではと懸念されています。