花と昆虫の契約(湿原植物の宝庫である尾瀬では、ある契約が昆虫と結ばれています - 虫媒花)

解説

 夏の湿原ではチョウやハチ、アブなどが蜜を集めるために花から花へと飛び交います。

 長いストローのような口を花に丁寧に差し込むチョウや、花の奥にゴソゴソともぐり込むハチやアブなど、蜜の集めかたも様々です。

 昆虫たちの蜜集めを観察していると、その体に花粉が付いているのが見られると思います。

 これは花が蜜を与える代わりに、花粉を他の花に運んでもらうという、共に生きるための契約を昆虫と結んでいるからなのです。

 こういった花粉の運搬を昆虫に頼っている植物のことを虫媒花と呼びます。

■ノアザミの密を吸うハナアブ。体には花粉がくっついている

 虫媒花には契約相手となる昆虫を選ぶこともしています。

 ノアザミの花の下部分(総苞片)や、イワショウブの茎を触るとネバネバしますが、これはアリの体に花粉を付けても、地面を歩いている内に花粉が落ちてしまうことから、地面から花へとやって来る昆虫を寄せ付けないための工夫なのです。

 また、ノアザミの花を上からやさしく触ると、雄しべの先から白い花粉がニョキッと出てくるのが分かると思います。

 これは昆虫が花の上で動き回る時だけ花粉を出し、無駄使いしないよう節約をしているのです。